ある講習を受けた際、認知症の話題になった時に 先生から伺ったお話しです。
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「僕が出向した施設でね、あるおばあちゃんがいたの。
普段は穏やかなんだけれど、施設に初めて顔を見る知らない人が来ると、傘を振り回して攻撃する。
僕がお邪魔した時もすごい形相で
僕はいろんな施設でいろんな方に接しているので驚きはしなかったけれど、なかなか命中率のいいおばあちゃんで、ここ 傘がかすったの(笑)
(と 腕をまくって見せてくださる)
出て行け!とか 言われたりして
関係者はまだしも外部の方や 施設見学に来た方などがびっくりしたり 怪我をさせてもいけないので、職員さん達は困っていた。
そういう時は部屋から出ないようにしたり、庭に出てもらったりして刺激しないようしてるそうなんだけど、
その日は僕の施術を受けるのに、部屋から出てたんだね。
「先生 運 悪かったですね。すみません。」って謝られた。
でも、僕は認知症患者の問題行動には必ず原因がある と考えていて、
それをお話しすると、職員さんが後日 ご家族に事情を話して、相談してみた。
それまではご家族も職員も「認知症だから(仕方ない)」という言葉で片付けていたそう。
おばあちゃんのお世話をしていた長男さんに相談し、長男さんが兄弟にその話をしたところ、
兄弟の一人が「もしかして・・・」
そのおばあちゃんは若いころ ご主人を戦争でとられ 女手一つで5人の兄弟を必死で育ててきた。
その家の玄関にはいつも木刀があって、その男性が小学生くらいになった時 なんで玄関に木刀があるのか聞いたところ、
「悪い人がきたら母ちゃんがこれでやっつけちゃるけん、おまえたちは心配せんでよか。」
それをブンブンと振り回して見せてくれたそう。
その話を電話で聞いた職員さんも「もしかして…」
いつもお世話をしていた長男さんはその事実をすっかり忘れていたし、もちろん傘を振り回す問題行動との繋がりなんて考えもしなかったから、
「母が迷惑かけてすみません」と謝るしかなかった。
でも 皆で想像したんだよ。
当時は家も古い木造の長屋のような住まいで 鍵なんてあってないようなものだったし
おばあちゃんだって当時はまだ若い母親で
自分がこの家と子供達を守らなきゃいけないというのは
そのストレスは多分 今の私たちには想像できないくらい
それが今 認知症という病を通して 出ているんじゃないか と。
知らない人が来ると、その当時の感情が出てきて、木刀の代わりに傘を振り回し、
大切なものを守ろうとしてるんじゃないかって。
それから 新人スタッフが入る日は おばあちゃんと顔見知りの古いスタッフが挨拶に連れて行くことになった。
「⚪︎⚪︎さん、おようございます。新人の⚪︎⚪︎です。今日1日 お世話させていただきます。宜しくお願いします。」